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罪深き誓約 【暁 由宇】

ふと目覚めるとそばにいる傍らで眠るこの人は長い間探していたたった一人のご主人さま――

「マゾヒスト」だと言う自分の告白を戸惑い苦悩しながらも受け入れてくれた能代聡、大切だと思う人を苦しめている事に常に罪悪感を感じながらも澤崎譲は自分の内に潜むマゾヒストの本性で虐げられ支配される事こそ強く望んでしまう。

聡の苦悩を目にするたび、捨てられてしまう事になるのでは…といつか来る別れに脅える譲、それでも彼はその感情をひた隠しにし、敬愛するご主人さま聡の前では笑ってこう言うのだ。

「私は貴方の快楽に仕えるために存在するのです」

それはまるで、自分自身が彼にとって常にそう言う存在でありたいと、そうであることを確認する儀式にもどこか似ていて…。

「快楽の支配者」の続編です、聡が自分の中の嗜虐性を認め譲を手放せない存在と認識し始めた事で俄然二人のそういう描写が増えたようです、タバコの火を押し付けたりとか鞭とか…痛そうです(^^;)

譲の性癖を受け入れたと言っても聡はまだまだ自分の中の嗜虐性に抵抗を感じている、SMのサディストの行為には虐待を匂わせるものがあると気づく方は多いと思います、しかしSMのプレイとその虐待とはまた違うものなのですよね、聡にもその違いが分からずにその辺りで悩んでいるのだと思うのです、難しい問題だと思うけど、相手がそれを欲しているか否かにかなり左右されるのかもなぁなどと思っても見たり。

人間ってたぶん誰でもある程度の嗜虐性や被虐性を持ち合わせているものだと思うのです、そのどちらかの傾向が強く出るかによってSになったりMになったりするのかなと…中にはどちらもOKないわばリバの方もいらっしゃるようですしね。

自分が結婚し、子供を産むまで私は自分の生んだ子供を虐待する母親の気持ちって全然分かりませんでした、しかし自分が実際その立場になって子供の些細な悪戯にカッとなり感情に任せて子供を殴ってしまったとき、自分にもおなじ物が存在する事にかなりショックを受けたのですが、そういう自分を認めると言う事はかなり勇気が要る事です。
もしかすると被虐よりも嗜虐の方が認めにくい感情かもしれませんよね?

聡が自分の中で過去の恋愛や父親との事を整理できてそれと決別し消化したあと、自分の嗜虐性を受け入れるシーンが途中出てきます、暴力を正当化し開き直るのではなく、そういう一面を持ち合わせた人間だとしてそれも自分なのだと受け入れるシーンです。ときの二人のあり方に不覚にも涙が出そうになりました、聡の言動にも、すごく健気な譲の態度にも胸が締め付けられそう、そんな気持ち。

二人はこの時やっと、この人こそ本当に自分に必要な人なのだと、この人だからこそ自分を受け入れてもらえられるのだと言う事を認識しあったのでしょうね。

この手の話を読んでいると強い羨望に囚われる自分がいます、それは痛めつけられたいとか支配されたいと言う気持ちよりも自分を丸ごと受け入れてくれている関係であると言う部分に強く惹かれるのですね。
SMの主従関係は恋愛関係とは違うものらしいですが、Mの人が駄目だと思いつつご主人様を好きになってしま想いを止められ無いと言う気持ちなんとなく分かるような気がするのですよね…。
たとえどんな自分であってもそれでいいそのままで良いと言ってくれる相手なんてそう居ないですから。

聡はすごくまじめなんでしょうね、譲の事を手放せないと気が付いた時から主人と奴隷である二人の関係を受け入れようと奔走します、この聡の真摯な態度に、こんな事にこの人を引き込んでしまって申し訳ないと思いつつもやはり惹かれてしまう気持ちを止められなない譲は、聡の事をたった一人のご主人様と崇めていてもそれで満足しているわけではないのです。

自分たち二人の関係について戸惑い苦悩する聡をちゃんと知っているから譲も同じ様に悩み、耐え切れずいつか捨てられてしまうのではと怯えます、勿論聡にはその気持ちは毛頭無いわけで、だからこそ自分のためにひいては譲のためにと奔走するのですが、このあたりの譲の気持ちに主人を無くしたMとしての孤独感とか苦悩を垣間見ることができるような気がしました。
こんな風にお互いが悩むのはそれだけ相手の事を真剣に考えているという証拠なのでしょうね。

何しろ聡は鞭で打たれると言う事がどれだけの衝撃であるか自分の体を実際に差出確認までしてるのですよ!萌え縲怩アんなまじめなご主人様なら私も欲しい…(ぇ?)

相手が誰でも良い訳ではない、プレイをする相手なら簡単に見つけられる、そうではなくて聡さんだから…この人だから与えれく痛みも苦しみも全て喜びに変わるのだと言う譲。

「私は貴方の快楽に仕えるために存在するのです」

文中に出てくる譲のこの一言にすごく深い意味を持つものだと感じました、彼のMとしての自覚と言うか、彼の決心の強さみたいなもも垣間見えるし、心からそう思える相手をやっと見つけたのだと言う喜びみたいなものも…多分この一言は譲にとって相手が聡だからこそ意味を持ち発せられる言葉なのでしょうね。

物語の途中で聡が自分のあり方を相談する相手として「格務」というSの男性が出てきます、文中では「快楽の支配者」の中で譲と聡が二人で行ったSMパーティで聡の命を受けて譲に公開プレイを施した相手の一人だと言う事がすぐに分かるのですが、はて…この名前どこかで見覚えがあるな?と思っていたら…そうだよ、暁さんのサイトで連載中の「Refrain」のS君だよ、ってことで当然そのパートナーの晃も出てきたりもし、番外編はこの格務と晃の物語となってました。

この方の書かれるSM物の受けくんはどちらもとても健気ですね、それは主人と奴隷の関係であるからなのかもしれないけれど、本当にご主人様が好きで好きで仕方がないというのが文脈から感じられてそういう相手を見つけられたことに羨望すら感じてしまいます。
(あぁなんだかこの手の話でこういうことを書くたびに、もしや自分は満たされていないのかもと感じたりもして、そういう感傷にちょっぴり浸ってみたりもするのですが(苦笑)

本文では書かれていない部分ですが、格務と晃もちょっと訳ありカップルだったりもして、この二人にも幸せになって欲しいなと強く思います(いや、もう既に幸せなのかもしれないけど…)

ものすごいまじめな内容だっただけに自分自身をも見直す1冊であったなぁなんて面白みの無い感想でごめんなさい。
かつてこんなにまじめに感想を書いた本があっただろうか…多分無いな、しかもなんだか無駄に長い…それに、あらすじの最初の一行目を読むと二人が同棲でもしているかのような気持ちになりますが、まだそこまでは行ってませんもしかするといつかはそうなる事もあるかもしれないけどね縲鰀(笑)

この方の書かれた本にこれの他にもSM物で「イノセント」というタイトルの作品があるようなのです、タイトルから察するに「近親相姦でSM物」と言う事になるのでしょうか。
こちらもかなり気になってます。

しかし、これよりしばしはSM物からは遠ざかろう…(笑)

罪深き誓約
罪深き誓約

posted with 簡単リンクくん at 2005. 9

暁 由宇著
雄飛 (2002.2)

オンライン書店ビーケーワンで詳細を見る

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