- 2006-02-16 (木) 10:36
- BL小説(作家名・あ行) | うえだ真由
好きな相手が事故に合って記憶喪失になった間に恋人がいない事を良いことに相手に取って代わる、ちょっと言い方きついかもしれないですけど要約するとそんな感じの話です。
ベタな内容だと言えばそうなのかもしれない、でも話の持って行きかたでどう転ぶか分かりませんよね、まぁそれは記憶喪失物以外の話でも言えることなのでしょうけども。
この想いは届かないはずだった、好きな相手には彼女がいて自分は男で…かなわない恋ならばせめて彼の友達として傍に居ようと思った。
その気持ちにけして嘘は無かったはず、なのに――。
同じ大学の同級生である坂口陽史(サカグチ ハルフミ)に淡い恋心を抱きながら少し分けありの彼女との交際を応援し友達でいる事を選んだ松岡里央(マツオカ リオ)。
半年間イギリスに留学する陽史の彼女、黎子(レイコ)をひっそりと見送りに行った帰り道、陽史の運転する車が事故を起こした。同乗していた里央も共に大怪我をして、その後搬送された病院で意識を取り戻すものの里央を庇って怪我の度合いの酷かった陽史は事故のショックで2年分ほどの記憶を失っていたのだ。
付き合っていた彼女の黎子の事はおろか自分の事も忘れている陽史に真央は献身的に尽すのだけれど、自分の恋心が邪魔をして、どうしても彼女の存在を陽史に告げることが出来ずにいて……。
甘い甘い蜜の味
陽史の相手は実はいいなずけがいて二人はお互い好き合っていたにもかかわらず周りには秘密にしなければならないような関係だった。
しかも留学で半年ほど海外に行ってしまって陽史の傍には居ない…
そこにきて更に記憶の無くなっている陽史がそれをどう見ても里央にとっては都合のいいような解釈で自分たち二人の関係を誤解してしまった。
手に入れられないと思っていたものが目の前にぶら下がってる、これはもう甘すぎるくらいに甘い蜜の味ですよ。
こんな美味しいもの目の前にぶら下げられて「いらない」って断れる人どれくらいいるんだろ…うーん、たぶん私は無理です。
でもこの蜜には毒があって、だから里央は苦しむ事になるんですね。
嘘をついてしまった事は確かにいけない事、陽史が記憶を無くし自分の部屋にあった誰かと付き合っていのだろう片鱗を見つけて、その相手を里央だと誤解したとしても本当はちゃんと訂正すべきだったのでしょう、そうすれば自分の付いたうそに苦しむ事も無かったのだから。
でも里央は自分の付いたうそでひとつ成長します。
自分の気持ちには嘘はつけないって事気づき、今まではずっと逃げてばかりだった事に気づいて、だからもう逃げないでいようと思った。
本当の事を全部知った陽史が里史と二人っきりで行った旅先の思い出の場所に里央を呼び出し告白するシーンが好きです。
「誰とも付き合ってない真っ白な状態になったとき新しい恋に落ちて――だから半年前の俺にはもどれそうに無いって」
そう言って黎子に別れを告げたのだと言う陽史、彼は黎子よりも里央を選んだのでした。
里央との恋は記憶をなくしていた時のの変わりでもなんでも無く新しい恋なのだと言える陽史の考え方が好きです。
いつも泣かされてしまううえださんの作品ですが、今回のは最初読んだときより、二度目、三度目と読み返して改めてその言葉の意味の深さに気づき涙したと言う感じでした。
先の2作品がそりゃないよ神様(この場合神様=作者さんですが)と言う流れの話だったので(ってか実際途中まではそう思ってたのですけど、残酷だよなとか…)この話だけはこの展開にありがとう!とか思ったり(笑
嘘をついていた里央の事をただ一方的に攻めたり詰ったりするのではなく、里央の気持ちを汲み取った上で自分に置き換えて考えられる陽史、そういう人だからこそ里央だけじゃなく沢山の人に慕われるのでしょうね。
このお話の挿絵を書かれているあさとさんのイラストが二人の雰囲気にすごくぴったりでそれもまた物語を盛り上げるのに一役買ってくれているという感じでした。
同時収録の「グリーンセレナード」はその後の二人。
ちゃんと好きだって言ってもらえて、付き合いを始めた後も陽史が記憶を無くしていたときに自分の付いていた嘘にどこか未だに後ろめたさを感じている里央なのですが、それを陽史がとても旨くフォローしていますね。
自分の無い物を一緒にいる相手に補ってもらう、そういう付き合い方が出来るって良いですね。
こんな風にその後のエピソードが少しでも分かるととてもお得な気持ちになりませんか?

スノーファンタジア/うえだ真由(ill あさとえいり)
bk1で見る⇒スノーファンタジア
エントリーとはまったく関係ないけど、この数週間プニル使ってみて思った事…
ごめんなさい…やっぱり私にはOperaくんの方が合ってるみたい、君にもいいところは沢山あるって分かってるけど…うち(ハードディスクの容量)狭いから…太った人ダメなのよね(オペラの4倍くらい場所とるんです)…短い付き合いだったけど元の鞘に収まるわ…
と浮気相手だった国産物の彼を結局ふってしまいました。
とうことで使わなくなっただけでなくついでにアンインストもしたので少しだけパソの動きが軽くなったっす(笑
自分から言い寄ったくせに捨てるなんて、私って鬼畜?
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Comments:8
- suzuya 06-02-16 (木) 17:50
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こんばんは縲怐IJuraさん。
>こんな美味しいもの目の前にぶら下げられて「いらない」って断れる人どれくらいいるんだろ…
同感です。多分大概の人は手を伸ばさずにはいられないと思うんですが、その「嘘」にどう落とし前をつけるか、というのが問題なんだと思いました。
>新しい恋なのだと言える陽史の考え方が好きです。
陽史、事故で記憶を失ってしまうようなうっかりさんなんですが、理想的な攻め様でした。惚れそうです。TBありがとうございました縲怐I私もTBいただいて帰りますねv
- Jura 06-02-16 (木) 18:41
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suzuyaさんこんばんは
そうですね、嘘をつくといつかは必ずばれるから、付いていい嘘もあるけどこの場合ついてはいけない嘘だったからなおさら落とし前のつけ方は大事ですよね。>事故で記憶を失ってしまうようなうっかりさんなんですが
あはは、確かに^^;)
実は私の知人にも同じような経験をした人が居て…
幸い彼は彼女の事は覚えていたけど自分が日本に居る理由(韓国の方だったので)とか忘れている事も多く、前日見舞いに来た人の顔を忘れちゃったりとかしてね…なんだかそういう現実的な部分を思い出してちょっと痛かったです。
だから、そういうリアルな経験も含めてこの二人がうまく言って本当に良かったななんて思ってもみたり。TB&コメントありがとうございました
ではでは!! - おほほ 06-02-17 (金) 18:11
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こんばんわ縲怐n「腐女子の萌え処」のおほほですm(__)m
拙宅へのコメント&TB、本当にありがとうございました♪基本的にベタなこの話が好きです(笑)。
好きなんだけど、黎子と陽史の関係があまりにモヤモヤでスッキリせずにのめり込めずに「恨みますぅ!」になりました(爆)。
なので全然里央のコトを悪く思えず、2人に新しい恋が訪れて本当によかったと思いました(笑)。
けなげで一途な里央を思わず誰でも応援しちゃいますよね。最後に、きちんと嘘をついた事にケリをつけた上で新しい恋が始まった事がとてもよかったと思っています。
ではではまた♪
- Jura 06-02-17 (金) 19:47
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おほほさんこんばんは
確かに黎子と陽史の関係はあれでしよね、どうして近い将来は別れなければならないであろう黎子を選んだのか…。
黎子も許婚が居ながら陽史を選んだのか…私にもわからん(^^;
まぁ今回の設定に限りこれはこれでありかなと言う気もしていますが。おほほさんのもやもやも判る気がします。>最後に、きちんと嘘をついた事にケリをつけた上で新しい恋が始まった事がとてもよかったと思っています。
そうですね、私もそれも含めこの話のラストシーンはとても好きです、これからの二人に期待したい。
コメントありがとうございました
これからはこっちでもあっちでもどうぞよろしくお願いします
ではでは - あすた 06-02-17 (金) 22:45
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こんばんわ。
コメントTBありがとうございました。私は黎子に感情移入してしまったんですが、そーか、お嬢様には婚約者がいたのでしたね。
誰にも陽史との関係を言わなかったってことは、やっぱいずれは陽史と別れるつもりだったのかしら。
いかん、どんなに感情移入しても、お嬢様の思考はやはり理解出来ません。貧乏人だから、私。(笑)こちらからもTBさせてくださいね。
では縲鰀 - Jura 06-02-17 (金) 23:02
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あすたさんこんばんは
黎子、確かにかわいそうで気の毒なんですけど、学校卒業したらちゃんと結婚する相手って言うのがいるんですよね、いずれは分かれないといけないのになぜ彼女は陽史を選んだのか、その点彼女の気持ちがいまひとつ判りません。あれかね?
せめてわずかな間だけでも本当に好きな人と過ごしたかった…って言う気持ち?ある意味それは自分勝手です。私も貧乏人なのでお嬢様の気持ちは判りませんわ(^^;)
コメント&TBありがとうございました
ではでは - 櫻井サクラ 06-02-20 (月) 11:35
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こんにたは、Juraさん。
ごめんなさい、ちょっとこの作品自体が記憶の彼方で・・・。
>先の2作品がそりゃないよ神様と言う流れの話・・・
実はうえだ先生の他作品を読んでいる途中・・・といいますか珍しく挫折しかけているのですが(v_v)
この作品かな縲怐A神様絡みで。TBさせていただきました縲怐B
では、また。 - Jura 06-02-20 (月) 19:34
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サクラさんこんばんは
同じ作者さんの書かれた話でも内容如何によっては自分とまったく合わない物ってありますよね縲彌n
私もこの方の作品ではないけど、もうこの先は読まなくてもいい…読みたくないって思う作品が数点ありますよ。
まずい話ではないと思うのにあれは一体何なのでしょうね?コメント&TBありがとうございました
ではでは!!
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- trackback from plastic-paradise 06-02-16 (木) 17:41
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スノーファンタジア
【スノーファンタジア】
うえだ真由 / あさとえいり
ディアプラス文庫・・・・・・ふと、耳許で悪魔が囁いた。
嘘は、何一つついていない。
ただ教えなかっただけだ。
恋人と思い込んだのは陽史だし、
黎子のことを忘れてしまったのも陽史だ。【あらすじ】
里央は親友の陽史に密かに想いを寄せていた。だが陽史の恋人が半年間の留学に出発した日、見送りに行ったふたりは事故に遭い、陽史が記憶喪失になってしまう。彼女の存在も忘れた陽史は、親身に面倒を見てくれる里央を自分の恋人だったと思い込む。ずっと叶わぬ恋だと諦めていた。でも、ひとといでも陽史の恋人になってみたい・・・。その気持ちに抗えず、里央は陽史のキスを受けてしまい・・・。罪と愛の幻想曲。【ココがツボ!】
記憶喪失ものです。自分が密かに想いを寄せていた親友の陽史が記憶喪失になってしまったのですが、かいがいしく面倒を見ているうちに、陽史が自分(里央)を恋人だと勘違いしてしまい・・・!というお話。難しい問題です。相手の記憶がいつ戻るか分からない。今、彼は自分のことを恋人だと勘違いしています。今なら、彼が恋人として手に入る。でも、記憶が戻ったら、彼は自分には別にちゃんと恋人がいて、自分が彼を騙していたことが明らかになるだろう。そして、自分は恋人だった日々と引き換えに、彼の友情すら失ってしまう。
自分の本当の想いを隠しても、一生親友でいるか。それとも、限られた時間でもかまわないから、恋人としての時間を手に入れるか。
あああ、究極の選択。
結局、この物語の主人公の里央は限られた時間でもいいから、恋人としての時間を選んじゃうんですね。でも多分、私が里央でもこの選択をしてしまうと思います。
自分の恋が、例えこんな歪んだ形でも、叶うという誘惑に抗える人は少ないと思うんです。相手を騙すことになっても、自分が傷つくことになっても、相手から差し伸べられた手を拒むことなんて、できない。
せっかく成就した恋、でもそれを素直に喜べない里央は後ろめたさに苦しみます。そうしているうちに、陽史の本当の恋人が帰国することになりました。これが最後のチャンスだと思い、思い出を作るために二人で旅行に出かける里央と陽史。
「すべてを代償にもらった三日間は、本当に楽しかった。
これで、全部終わったのだ。つらいことも、楽しいことも、何もかも」続きは読んでからのお楽しみ(笑)
なんか、昔「愛は勝つ」という歌がヒットしましたが。「どんなに困難で、くじけそうになっても」「最後は愛が勝つ」という歌詞は、実は本当は愛が勝つというのはキレイごとで、ホントは愛が勝つとは限らないと知っているけれども、それでも、愛が勝つと思いたいよね、っていう内容の曲だと思ってました。
なんとなく、そんな歌を思い出したお話でした。
「好き」という想いだけでは、色々な困難を乗り越えてゆくのは難しいけれども、それでもそれらを乗り越えて行くだけの強さが欲しい。好きという想いの強さで得る幸せを教えて欲しい。
「愛」が勝ったこの物語。なんか、作者のうえださんがおっしゃってる通りベタなお話かもしれませんが、こんなおとぎ話のような恋の成就をみると、「愛」はホントに勝つのかもしれないな、という夢を抱かせてくれます。
そういう夢みたいなお話です。途中は痛くてしょうがないお話ですが、痛さを乗り越えた故に手に入れることのできるものもあるんだよ、という救いのあるお話でした。
こういうお話、好きです。えへ、乙女ですから(笑)
ホームページ制作
- trackback from B-Life.SS 06-02-17 (金) 13:22
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[BLS]スノーファンタジア
うえだ真由&あさとえいり(新書館ディアプラス文庫) うえだ先生は後書きでよく「ベタ」なものが好きだと仰ってますが、声を大にしてお伝えしたい。「私もです」と(笑)そして今回はそんなベタ王道のような作品ですとの事で、読んでみると確かにそうなんで…
- trackback from MOUSOBI@ボーイズラブダイアリー 06-02-17 (金) 22:48
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スノーファンタジア
冬のつく某韓国ドラマみたい…と、なんとなく雰囲気で思いました。
そのドラマ、まともには見てないんだけど。なんとなく。「スノーファンタジア」
うえだ真由
ディアプラス文庫スノーファンタジア
以下ネタバレ
- trackback from 櫻井サクラの日々徒然・BL編 06-02-20 (月) 11:26
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スノーファンタジア(うえだ 真由/あさと えいり)
事故で記憶喪失になった陽史にずっと思いを寄せていた里央は陽史に嘘を吐き恋人の振りをする・・・。 里央の気持ちはよく判るなぁ~。狡いとかは全くなくて、多分自分が同じ状況になっても同じ事するだろうなぁと思うんですよ。健気で、でも罪悪感で一杯で。ホントに陽史が好..
- trackback from 月と凌霄花 06-05-23 (火) 23:13
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『スノーファンタジア』
スノーファンタジア
うえだ真由/あさとえいり
新書館ディアプラス文庫 2005.10
スノーファンタジア。直訳すれば「雪の幻想曲」ですが、fantashiaにはよく知られたメロディを接ぎ集めた「接続曲」という意味もあります。失われた記憶の断片を継ぎ合わせるようにして、ひそやかに叶えた恋を暗に示しているようでもある。また、snowにも雪というだけではなく、そっと暗示しているものがあるように感じました。松岡里央(りお)は同じ大学生の親友、坂口陽史(はるふみ)に恋をしているが、男同士であることを理由に想いを告げるつもりはなかった。男らしい要望に明るい雰囲気の陽史は男女問わず人気があり、そんな陽史の一番の友人という場所にいられるだけで充分だった。陽史には他の誰にもつきあっていることを秘密にしている、ちょっとワケありの彼女がいた。政治家の娘で既に婚約者がいる黎子とのつきあいに悩む様子は見せても、陽史が彼女のことをとても大切に思っていることを里央は傍で見て知っている。このまま叶わぬ恋だと諦めていた里央に、運命は残酷ともいえる悪戯をしてみせる。
半年間の留学へと向けて旅立つ黎子を空港まで見送りに行った帰り、里央を助手席に乗せた陽史は不注意から事故を起こしてしまう。トラックと正面衝突という惨事から命は取り留めたものの、陽史は二年ぶんの記憶を失ってしまっていたのだ。あとがきで言われているように「ベタ」なお話なんですが、ちょっとした展開の見せ方や、キャラクタのやりとり、雰囲気とかがよくて、じわじわと引き込まれるように読みました。ベタなものって受け付けるか受け付けないかが、はっきり分かれると思いますが、この作品は私にはけっこうおもしろく読むことができました。
簡単に言うと、記憶を失っている陽史の世話を献身的にするうちに、陽史が里央が恋人だったと思い込み、里央も本当のことを言い出せずなしくずしに恋人になるという話。なしくずし的ではあるのですが、失った記憶に対して焦りを抱えている陽史にとって、日々親身になって傍にいてくれる里央の存在は間違いなく心の支えであったでしょう。里央が恋人だったのではという推測が成立せずとも、いつしか里央から滲み出る愛情を察知して恋人になったかもしれない。もし時間と事情がゆるしてそうなったなら、里央は彼女がいたことを黙っていただけであり、罪悪感は一つ減るところでしたが、黎子が戻ってくるまでの半年という時間制限があったため(作品に)、そうは事は運びませんでした。
確信めいた口調で恋人だったのかと陽史に問われて、否定できなかった里央を愚かだと言ってしまうのは簡単だけど、頷いてしまった自分を責める気持ち、半年後には確実に訪れる終わりを恐れ苦しむ気持ちに縛られて、つかのまの恋を精一杯に楽しめない里央は、見ていてとても可哀相でした。黎子が戻ってきたら、陽史の記憶が戻ったら、一体なんと弁明するつもりなのか、どう考えても八方うまく収める言い訳なんて思いつかない私は、その日がくるのがとても恐かったです。
もしも記憶を取り戻した陽史が里央を一方的に詰ったら…。軽蔑されたら…。ほとんど里央と同調するように悩んでました。最後の思い出にするつもりで訪れた軽井沢の雲場池は、真っ白な雪。里央を恋人だと信じてくれている陽史と、言葉少なに冷たい指先をつないで、里央がひっそりと別れの覚悟を決めるシーンは少し胸が痛い。情景が目に浮かぶようで、ベタなお話であっても、やはり心に残るような描写があるのとないのとでは大きく違う。現実味が薄くてどこかお伽話めいたお話の、最大の要所はこの雲場池でのシーンにあったと言っていいと思う。
ただ、その後、帰国した黎子を空港に迎えに行くシーンでは、オイオイ里央、それはいくらなんでもぶっつけ過ぎだと思いました。陽史が黎子の顔を見た途端に全てを思い出さなかったら、取り残された陽史と黎子は非常に困惑したでしょう。じっさい陽史はそこで記憶を取り戻したので、帰国してきた彼女をちゃんと迎えるわけですが。
逃げ出した里央に陽史から連絡があったのは二週間後でした。あの雲場池に来るよう指示した短いメールに、陽史の怒りを見てとった里央は再び、今度は責められる覚悟を決めてその場所へと向かいます。このとき里央が最後まで逃げていた自分に気づき、もう逃げないで正直になろうと決心する。私ならできるかな、と思いました。里央は確かに弱くて、嘘を取り消すことができなかった。けれど、その嘘は全く取り返しがつかないわけではなかった。嘘も、自分の気持ちも、陽史の気持ちも全部認めて、向き合おうとする強さがあった。
そうして対峙した二人ですが、そこで陽史から告げられた思いがけない言葉の真摯さが、好ましいです。二週間という時間は陽史にとっても冷静に自分を見つめなおすために必要だったのだろうなぁとか、きっと色々と考えたのだろうなぁとか。陽史自身については、なぜ婚約者がいる黎子と秘密の恋なんて事態に甘んじているのかと納得できない部分も多いキャラなのですが、きちんと整理して色々なことを伝えようとする姿勢は好ましい。
さて、最初に述べたsnowの暗示しているもの、ですが。
記憶を失っていた状態を陽史は「真っ白な状態」と表しました。これが、雪のイメージとも重なります。一度目に見た雲場池は雪に覆われた白、陽史は記憶のなかった状態です。二度目のその地は雪融けて木々に芽が吹きはじめている。だからどうというわけではありませんが、うまくイメージを使っているなと思いました。後半部分は、改めて恋人になった二人を描く「グリーンセレナード」。白からグリーンへという移行に、自分の推測があながち間違ってもないなと思われます(笑)
この話では、再びつきあい始めたものの、まだどこか最初についた嘘の後ろめたさを引きずっている里央の様子がもどかしく書かれています。きっかけはどうあれ、今は里央のことをちゃんと好きなのだと、ここでも真摯に語りかけてくれる陽史。この丁寧なフォローを見て、榊花月さんの『光の世界』を読んだときに感じたもどかしさがスッと晴れたような気がしました。始まりがどうあれ…、今はちゃんと好きなのだと伝え合うことが、『光の世界』では薄かったのが惜しまれたのだと、このお話を読んで思い至りました。
ただ、どんなに誠心誠意からの言葉を尽くしてくれても、黎子との不自然なつきあいについて陽史が感じていた心情に実感が伴わないし、後ろめたさから強く恋情を表せない里央に焦れて試すようなことをする陽史のことは、ちょっと嫌いだな。って、まだ大学生なんだよね。ごめんね、つい攻には度量の広さを求めちゃって(笑) そんなわけで、全編里央視点で書かれていたこの作品、もう少し陽史の気持ちを掘り下げられていたなら、もっと素敵な恋のお話になったかも。
でも、このベタさは癖になりそうです(笑)




