- 2006-05-12 (金) 8:02
- BL小説(作家名・か行) | 柊平ハルモ
―― 罰してほしい
心ごと躯ごと……。
初柊平作品です、柊平で「くいびら」なんですね、一発変換してくれないよ、また単語登録文字が増えちゃいますね。本当はこれの前にももう一つ別の作品を買っていたのですが、こちらの方が気になっていたので先に読んじゃいました、なんでかって私ね、これねものすごい勘違いをしていた事を買って読んでから気が付いたのです。裏表紙のあらすじにある「男娼」って言うところを読んで、受けくんが着物着ているし、これはきっと遊郭とかそういうネタなんだって時代は大正とか昭和初期ごろの設定で、身分違いの恋みたいなんだろうな縲怩ネんて勝手に思い込んで買ったんですけど。
ページを開いて最初の一行の
『鍋のふたを取ったとたん、開放感のある対面キッチンには、味噌汁のいい匂いが漂いはじめる。』
って言うところを読んで自分の大きな勘違いにやっと気が付きました、『対面キッチン』??そんなしゃれたキッチン大正時代とか昭和初期にあるか???
まぁ…たぶん大抵の家には無いでしょうね(笑)
男娼ってそうか、要するに売りをしてたってことなんですね、陽海に似ているという花園海と言う男が、そうね現代の話だったのでした。
ま、それ私が勝手に思い込んでいただけで時代設定が過去のものであろうと現代ものであろうとぜんぜん関係ないのですよね、読んで面白ければそれでOKみたいな感じで楽しめばいい訳なんですが、でもちょっとだけショックだったの(笑)
しかも続けて2行目に
『味見をした松崎陽海(まつざきはるみ)は、満足そうに表情を綻ばせた。これなら大丈夫。恋人が作ってくれる味噌汁ほど美味しくはないけれども、まずくはないはず。』
って所読んでさらに、あれ???
これ海って男娼の男の子が主人公の話じゃないの???なんて微妙に混乱(笑
でもって恋人に味噌汁つくって上げて、ご褒美にキスもらっているような甘い時間は無粋な訪問者に突然絶たれてしまいます、恋人の家にやってきたのは警察でした。
警察官は逮捕状を出して言います「結城章博(ゆうきあきひろ)未成年略取及び誘拐の容疑で逮捕状が出ています」と、両親と喧嘩して恋人の元に転がり込んできた陽海はまだ16歳の高校生、喧嘩の理由は陽海の恋人が年上の男の人だったからです。
陽海の家は父親が元華族出身の書道の大家、母親は旧家出身の和裁家で着付けしと言うような由緒ある家柄の息子だったのですね。
「ここには自分の意思でやってきて自分の意思でここに居るのだから章博さんは何も悪くない」
と恋人をかばって陽海がどんなに主張しても未成年だからって言う理由でその言葉は誰にも聞き入れてもらえず章博は親告罪として逮捕されてしまいます。
陽海はそれを気に病んで気に病んで自分を責めて責めて、精神的に追い詰められておかしくなってしまったのでしょうね、きっと……
誰にも何も告げずにそのまま行方不明になってしまいます。
花園海と結城章博が出会うのはそれから2年後……。
陽海が行方不明になった事で両親が告訴を取り下げて章博はあの後結局すぐに釈放されるのですが、元々の仕事もやめて今は経済ヤクザとして裏社会に身を落していました。
それも、行方不明になってしまった恋人の陽海を探すためなのですが、すさんだ生活のためなのか、気持ち的にもまったく余裕のなくなっている彼は恋人の陽海に瓜二つで同じところにほくろがある海の事を出会った当初いなくなってしまった陽海に重ね合わせてしまい、自分のことを「花園海」だと言い張る海の事を手ひどく抱いてしまいます。
このあたりの章博の執着は怖いくらいなんですよね。
この話を一言で言うと、一途な愛が招き寄せた悲喜劇と言うものなのでしょうか、そこには攻めの章浩の執着愛も含まれるでしょう。
悲喜劇と書きましたが、喜劇的なものはまぁ一切無いですけどね、うーんなんとなく…^^;)
でもこれ、私には海の存在がすごくかわいそうでたまらないのです。
だってどんなに「陽海じゃない」と主張しても「陽海」しかいらない章弘には受け入れてもらえないのですよね
でも、この海がほんと健気で一途で可愛くって泣かせるんです。
章博が陽海を必要としているから出来るだけ陽海でいようとして言葉遣いを変えてみたり「陽海」でいても良いよなんて言っちゃって。
――俺は俺がいりません。そのかわり章博さんに陽海を返してあげてください
なんて祈ったりするんです、自分じゃ章博を本当の意味で癒して上げることは出来ないからって。
あーもう!!
なんでだろうな縲恷рヘこの子にこそ幸せになってほしかった、でもね。
だめなんですよね、海はやっぱり海でしかなくて章博の大切な陽海ではないから……
章博はもうなんつうかほんと不甲斐ない!それしか言えない。
法律は俺たちを守ってはくれなかった
とか、別のもののせいにしてますけど、やぁ…うーん確かに法律は時として守ってくれるべき私たちを反対に苦しめるものにもなりますけどね。
でもこれ章博がもう少し冷静で思慮深かったら、陽海が自分の事で両親と喧嘩して家出してきたときにも「君は未成年なんだから、ここに居ちゃいけない一旦は家に帰りなさい」と心鬼にしてでも強引に家に帰してたらこんな悲劇は起こらなかったのよね?
まぁ彼にしてみたらちゃんと陽海のうちには連絡を入れて「落ち着くまではしばらくこちらで預かります」と伝えて、一旦は両親もそれで了解していた様だから、逮捕騒ぎは寝耳に水状態でもあっただろうし気の毒って言えばいえない事も無いのですけれど……。
陽海が居なくなっていた2年の間に陽海探しを手伝ってくれていた小城と言うヤクザな男が物語の中で何度か登場するんですけど彼の言葉を借りるなら「ったく、あなたは甘いから……」何ですよ、うん…。
陽海は章博の事を「包容力があって優しくて大人で素敵な恋人」といってましたが、それは16歳の陽海の視点で見た章博の姿なんですよね、まぁ実際そうだったのかも知れません、でも彼は陽海のいなかった2年の間にすっかり変っちゃって、海の前でも
「陽海、陽海、陽海、陽海、陽海」でちっとも余裕の欠片も無いし疑心暗鬼の塊で戻ってきた陽海の事すらも結局は傷つけちゃうし。
せっかく優しい恋人である章博のところに戻ってきたのに、自分が居ない間に変わり果てた恋人は当時の面影は無くて陽海はやっぱり自分を責めちゃいます。
帯に「罰してほしい」って書いてあるんですね、何をどう、罰してほしいのか、これは誰の気持ちなのか。
陽海のふりをして章弘を愛してしまった事を海が罰してほしいのか、とも思ったのですがどうも少し違うようです、海が陽海であることを望んだのは章博の方ですしね。
初めて自分の両親に逆らって自分の意思を貫き通そうとした結果がこれだなんて、あんまりといえばあんまりですね。
陽海にしてみれば、ただ純粋に愛する人との幸せな生活を願っていただけなのにね。
だから、何も出来なかった自分を罰してほしかったのでしょうか、もしかすると自分も一緒に罪をかぶりたかったと言う事なのかもしれません、それがああいう結果につながってしまった、海が「自分は幸せになっちゃいけない気がする」ってずっと思ってたのとか、自分の年齢を22歳だと言っていた事とか、客との間の性交に痛みを伴うものを望んだのもきっとそのせいだったのでしょう。
なんかこんな事書いているとどう考えてもハッピーエンドにならなさそうなんですけど、とりあえずハッピーエンドになるんですよ、最終的にハッピーエンドではあるんだろうけどでも海が本当に健気でいい子だったから。だから哀しくて仕方ないのです。
逃げちゃだめだって陽海が強くなろうとしたからもうきっと海が戻ってくる事はないのでしょう。
ああいう形でしか、章博と陽海の二人にとってハッピーエンドはありえないのかもしれないけど、私としては海は陽海じゃなく、花園海のままで居てほしかったというのが正直なところ。
海は花園海として幸せになってほしかったです。
ここまで読んでくださった方々には気が付いている人もいらっしゃると思うのですが……。
これはばらしちゃうと最大級のネタばれになっちゃうのかなと思いつつ最後にばらしちゃいます(ぇ?)
そう、これ記憶喪失ものです、正確に言うと多重人格症にややちかい感じの記憶喪失って感じの話です。
読み始めて割りと最初の方にもしかしてそうかなと思わせるような所があるのですぐにわかるとは思いますけど。
どうやらプラチナさんのHPにこれの番外編SSがUPされているようですね、落ち着いてからその後の二人の話で、幸せそうな様子が伺えます。
だけど最後まで読んでもやっぱり哀しいのです、それだけ海に肩入れしちゃったのかもしれません。
どうかこれからも二人の平穏な日常が少しでも長く続きますように。
章博の幸せを心から願っていた海の為にも。
繋いだその手を離さないで……。

吐息まで罪の色/柊平ハルモ(ill 笹生コーイチ)
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Comments:4
- あけみ 06-05-12 (金) 23:36
-
こんばんは、Juraさん。
海の健気さに、してやられました、私。
私も、ホント海に肩入れしちゃいましたよ。
だから、元に戻ってしまったのを喜ばなくちゃいけないんでしょうけど、「海の幸せは縲懊懊怐H」って突っ込んじゃいました。
海にも幸せになって欲しかったですよね。 - Jura 06-05-13 (土) 1:37
-
あけみさんこんばんは
ほんとにこれを書いてる今でさえ彼の事を考えると涙出ちゃいます。>「海の幸せは縲懊懊怐H」って突っ込んじゃいました。
二人が同一人物である以上2人とも幸せってありえないかもしれないけど、微妙に納得のいかない気分にさせられてしまったのも事実です。
海は陽海の罪悪感の象徴だったのかなぁなんて(T-T)
コメント&TBありがとうございました
では! - 櫻井サクラ 06-05-13 (土) 10:04
-
おはようございます、Juraさん!
TB、コメントありがとうございます。どうも私は柊平先生のタイトルの付け方に弱いようです、大好き!というわけではないのですが無意識に選んでしまっているようです・・・。
その中でもこの作品は好きで、泣きながら読んだ覚えがあります。自分の感想+Juraさんの感想を読みながら、一人で盛り上がって・・・もう一度読み返そうと。
昨晩からTBさせて頂こうと送っているのですが、失敗続きでして・・・
取り敢えず先にコメントを送らせていただきました。
後でもう一度試してみますが、TBの方は暫くお待ちを! - Jura 06-05-13 (土) 14:57
-
サクラさんこんにちは
泣いちゃいましたか、やっぱり…私は海の祈りのシーンになったら堪えることが出来なくて止まらなくなりました。全部読み終わってラストに来ても、良かったねって思うけどその一方で海の事が哀しくて。
でも考えてみると海の幸せは章博が幸せになる事だろうから、やっぱり二人は一緒に居てくれないと…。
コメントありがとうございます、TBの事は気になさらずに縲彌n
では!
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吐息まで罪の色
吐息まで罪の色柊平 ハルモ/笹生コーイチ プランタン出版 2005-12by G-Tools
あらすじの“男娼”“経済ヤクザ”という単語に引き寄せられ、初めての作家さんでしたがついつい購入しましたが、結構あたりでした。
こういう時って、うれしくなっちゃいます。プロローグ….
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吐息まで罪の色(柊平 ハルモ/笹生 コーイチ)
出逢いは陽海が16歳の時。親と喧嘩をして恋人の章博の元に逃げ込んだ陽海。ちゃんと連絡を入れたにもかかわらず、両親の通報で未成年者略取と誘拐罪で章博が連行されてしまう。その後、章博が留置所から出た時には陽海は消えていて・・・・・・。2年後、陽海を探し出した章博..




