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恋をしている君たちへ【麻生 雪奈/illust 木下けい子】

初めての作家さんです、以前「櫻井サクラの日々の徒然・BL編」のサクラさんが感想を書いているのを見てよさそうだなと買いました。

これが2006年最後の感想になるかなぁ……さて、どうだろ?

九州の海の側にある街に産まれた時から住んでいる小川禾秧(おがわ かなえ、通称カナ)カナのクラスに北海道から転校生が来た。
百道(モモチ)とまだ慣れない地名を『ひゃくどう』と得意げな顔をして言い間違えて、クラス中の笑いをさらった彼は名前を柏木侑斗(かしわぎ ゆきと)と言った。

自分の自宅と近いからと、侑斗の席を自分の前席と勝手に決めてしまったカナ
「よろしくな、柏木」
そう言って差し出されたカナの綺麗な指を見て、少し照れくさそうにでも微笑んだ侑斗。

14歳、中学2年生のまだ春も浅い季節。
カナと侑斗。二人の物語はこんな風にして始まった……。

高校生同士の学園モノって感じの話は普段はめったに読まないのですよ、書く事はあるんです、なのにどうしてか買う気にはならないのですが、でもこれは買ってよかったと思いました挿絵が木下けい子さんだったのもポイント高かったかな(笑)

この本って再販本なんですね、最初の刊行が1999年だそうです、7年前ですか?作者様があとがきに「いちばん最初にこの話を書いてからもう10年経ちました」という様なことを書かれています。
表題作の「恋をしている君たちへ」と続編にあたる「愛を夢みる僕たちは」との2部構成になっているので二つの作品の時間差が刊行年数の時間差なのか……とまぁそんな事はどうでもいいんだけど。

10年と言ってもそれほど古さは感じません、やっぱりいいものはいつ読んでもいいんだよぅ。うん…そういう事だきっと。
1999年に刊行された新書版の時の挿絵は二宮悦巳さんだとか(二宮さんて『毎日晴天!』のイラスト描かれた方か…読んだこと無いんだよな)と言う事で、今サイトのイラストを見てきました……この方のイラストもこのお話に合いそう、見てみたかったです。

カナと侑斗が出合ったのは14歳、イヤー青春真っ只中の二人、いいですよね、若くて夢や希望に満ちていてまわりが輝いて見えて自分が中心に物事が回っているような気さえして。

だから、自分の力で何でも出来そうな気がしたりして。でもまだ未熟な彼らは脆くて傷つきやすくて、突然目の前に大きな壁があることに気がついてそこで初めて自分が子供であることを思い知らされて。

自分の力では超えられない壁の前で精一杯足掻いて足掻いて……足掻いた末、自分が子供であること、出来ないことがあることに気がついてそれを消化して受け入れて。

無理しなくていいんだと、自分が今出来ることからやればいいんだって気付いて、そこからまた前に一歩足を踏み出す……。

そんな物語だと思った。

決して派手でもドラマチックでもない普通の恋愛物語なんですよね、でもだからこそそこにまだ芽吹く前の彼らのリアルな息吹を感じる。

相手のことを考えるとドキドキしたり、嬉しかったり優しい気持ちになったり。でもまだ若くて経験も浅いからほんの些細なことで不安になって喧嘩して、相手を傷つけてしまったり。

あぁ…きっとこれが恋してるって言うんだろうな……。

なんて、読んでいるとね、自然に口元が緩んでくるんです、彼らが可愛くて、微笑ましくて。

ストーリーはプロローグ的なカナと侑斗の出会いからはじまってすぐ数年後、二人が高校生になってからの話へと以降します。彼らは出会ってあっと言う間に仲の良い友達になりそれからずっと一緒に過ごしてきた、選んだ高校も一緒、きっとこれからも一緒に居ることが普通なんだろうなって思っているほど仲の良い友達。

友達って言うけれどなんだかね、この二人まだお互いの気持ちを確認し意識する前から既に誰にも入り込めないような二人だけの世界が出来ちゃってんですよね。
傍から見てればばれなきゃ嘘だろ?って言うくらい常に一緒で寄り添ってたりなんかして(笑)

でもカナの方は自分の気持ちに気付いていないのか、それとも誤魔化そうとしているのかカナの中の侑斗の位置づけは、あくまでも『大切な親友』なんですよ。
こんなに一緒に居るのになんで、気がつかないんだニブチンだなカナ…ってじれったくもあるんだけど、でもなんとなくこのカナの気持ち(と言うか思い込みと言うか)わからないでもない。

だって同性同士の友情と恋愛感情の境目ってわかりにくいですよね、自分の親しい相手が自分以外の誰かと仲良くしてるのを見て嫌な気持ちになるのは、今まで自分だけのものだった親友が別の人と仲良くしているのを見たから悔しいのか、それともこの気持ちは友情以上のもの、所謂恋愛感情が絡んでいて、そこから来る嫉妬なのか……判断基準のあって無きが如しの感情の区別なんて付けられっこない気がするんだもん。

侑斗の方はカナと違って素直で率直、傍から見てもすぐに友情以上の気持ちが絡む独占欲だってわかるんですよ(笑)

侑斗は両親を亡くして親代わりの兄と一緒にカナの住む町に越してきて兄弟二人で生活しているのですが、侑斗と顔がそっくりだという兄、翠…

お兄ちゃんの翠は二人きりになった弟の侑斗の事が大切で、大切な弟の友達のカナもやっぱり大切、そんな大切な二人のことを良く見てるから弟の気持ちにもすぐ気付いて(侑斗わかりやすいし^^;)最初心配して反対して二人を別れさせようとします。

もしかするとまた兄の仕事の関係で北海道に帰らなくちゃならないかもしれないと言う侑斗の言葉にショックを受け別れたくないと思いつめたカナが侑斗と二人で駆け落ちしようとしちゃったりするんですよね。

愛の逃避行ですよ……(*ノノ)キャ♪

そんな時、頭に血が上ってる(笑)翠を宥めるのがカナの母方の従姉妹の澤井 華。彼女の存在がいいですね、華ちゃんはバツイチで翠より少しお姉さんだからそのぶん経験もつんでて物事をもっと冷静にみられるんでしょうか。

カナと侑斗の二人のこと賛成しているという風でもないですが、かと言って頭ごなしに反対もしていない。物語における指南役のような存在。BLモノにおいて指南役の女性の存在って結構貴重ですよね。しかも後に翠と結婚したりして(……ちょっと出来すぎっていえば出来すぎなんですが、ゲイカポーの周りは皆ゲイカポーって話よりずっと自然で良いですvv)

そんな大人たちの支えや導きがあったからこそ、カナは自分の侑斗への気持ちがなんであるか自分は侑斗とどうなりたいのか悩んだり、お互いの気持ちを確かめ合った後お互いの進む道が違って離れ離れになる事が怖くて悩んだりしても、最終的にちゃんと自分で答えを見つけることが出来たのでしょうね。

そこにはもちろんカナの気持ちを尊重することの出来る侑斗の存在があったからこそなのですが……。

二人の未来も大切だけど、見えない未来に脅えたり不安に思ったりするんじゃなく今をどう楽しむか。それをもっと大事にしたい。

そう結論付けたカナ。侑斗もその思いはやはり同じでした。

まだまだこれからの彼らには色々な未来が待っているのだと思います。でも、何があっても……この先もしも二人が離れ離れになって別の人生を歩むようになったとしても、この素敵な恋はきっと思い出すたび、互いの胸に優しい灯りをともすでしょう。

若いっていーなー(笑)

恋をしている君たちへ (アクア文庫)
著者/訳者:麻生 雪奈
出版社:オークラ出版( 2005-07 )
定価:¥ 560
文庫
ISBN-10 : 4775505963
ISBN-13 : 9784775505960

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